小説紹介 「殺人出産」 村田紗耶香
殺人出産 村田紗耶香
みなさんこんにちは。
みなさんは読書はしていますか?筆者は大体月に3~5冊(まばらですが)は読むようにしています。
電子書籍でも構いませんが安く購入するならやはり中古で購入し読み終わったらまとめてまた売りにだしてまた買って、を繰り返しています。(ブックオフはお勧めです)
さて最近読んで印象に残った村田紗耶香さんの殺人出産について述べていきます。
・独特な世界観
この村田紗耶香さんという小説家の描く世界観は非常に独特で若干SFチックで、しかし生々しい人間の部分もしっかり捉えられていて読み手を非常に惹き込んでいくのが特徴です。
「コンビニ人間」という同作者の作品も読んだことがありますがそちらもかなり不気味な内容で、物語も淡々と進んでいきあっという間に読み終わってしまう内容でした。
またこの作者は一部からはクレイジー紗耶香と呼ばれておりその変態的な内容は熱烈なファンを生み続けています。筆者もこの方の違う作品を何冊か読んでいますがどれも惹き込まれるものばかりで
「この作者の違う作品をもっと読みたい!」思わせるほどです。
さて今回は作品紹介というよりは作者が印象に残った部分とこれを読んで筆者がどう感じたのかを述べる形をとり、ネタバレはしないようにいたします。
命を奪ったものは、命を生み出す刑に処される
「殺人出産」これはあらすじにも記されていますが、この物語の中では10人産んだら1人を合法的に殺してもいい「殺人出産システム」が導入されています。
もう惹き込まれるこの殺人出産システムですが、教師が生徒にこのシステムを紹介しているシーンで
「命を奪ったものは、命を生み出す刑に処される」というシーンがあります。これはかつての人類が、人口減少を食い止めるため命を奪った者、すなわち殺人を犯した者には死刑や刑罰ではなく人を産ませようというものであまり現実的ではないですがこの物語はそのシステムが導入された世界の話です。
特定の正義に洗脳されることは、狂気ですよ
これも某シーンでのセリフですがこの殺人出産の中には様々な主張があります。たしかクレヨンしんちゃんの野原ひろしも似たようなセリフを言っていましたよね。「正義の反対は悪じゃない、ちがう正義だ」と。
色々な主張が飛び交う中主人公は葛藤を抱えこのクレイジーな世界で疑問を感じつつ時は過ぎていきます。
「産み人」と「死に人」
10人産んだら1人殺すことができる。恨みがあって殺したい人がいる。だから10人産んで1人を殺すことを自ら選んだ人を「産み人」と呼ばれます。そしてその産み人によって合法的に殺された人は「死に人」と呼ばれ、「死に人」は他者から祝福され死んでいきます。
たった1人死ぬことによって10人新たな命を生み出すきっかけを作ったのですから。
このあたりのシーンは非常に狂気です。洗脳された世界というのを垣間見ることができます。
もっともっと印象的なシーンが多くありますがネタバレとなってしまいますので軽くこの辺で終わりにしたいと思います。
とにかく不思議な世界、こんな世界線ももしかしたら存在する可能性があるのでは?と錯覚するほどなんだか不思議な気分になりました。若干グロいシーンもありますが全体的に読みやすくて文字数も少ないので1時間から2時間程度で読み終えるかと思います。
またこの殺人出産は短編集でほかにも「トリプル」、「清潔な結婚」、「余命」という作品も載っています。どれも殺人出産に引けを取らない不気味な内容ですがすべて読み終えて正しい世界って何だろう?って疑問に思ってきて、正しいってなんだろう?間違っていることってなんだろう?そもそも正しくないといけないのか?・・・のような自分の価値観が揺らいでいく気持ちになりました。(この短編集はどれも正しい世界とは?というのが共通点なのかなぁと推測します)
結局は先ほど述べた野原ひろしの「正義の反対はまた別の正義」のように自分の価値観は他人とは違って当然、それを悪だと非難したり攻撃したり差別したりしてはいけないんだと思いました。
「清潔な結婚」
殺人出産ではないですが同じく収録されていたこの作品が個人的に好みです。某シーンがあまりにも可笑しくって想像するだけで吹き出してしまいそうです笑
詳しくは述べませんが気になる方はぜひ殺人出産を手に取って読んでみることをお勧めいたします。